内容証明を出す前に
~内容証明郵便を出す前にご一読頂ければと思います。~
内容証明郵便を貰ってしまうと、思わず「ドキッ!」とするものです。
今まで普通の社会生活を送ってこられた方の場合、他から内容証明郵便を送りつけられるような機会はなかったでしょうから、驚いてしまうのも仕方がありません。

しかし、内容証明郵便といっても、言ってみればただの手紙に過ぎません。何の法的強制力もないのです。ただ、郵便局によって「このような内容の手紙を出した」ということを証明されるもので、さらに配達証明を付けることによって、「このような内容の手紙を〇月〇日に確かに配達した」という証明をしてもらえるという特殊な手紙というものです。
内容証明文書には、よく「1週間以内に回答せよ」とか「10日以内に金〇〇円を支払え」などと書かれていたりしますが、その通りにしなければ法的に不利益が発生するようなことはありません。このことは、普通の手紙に期限や金額を書いていることと同じことなのです。
では、なぜ内容証明郵便を受け取ると驚いたり不安になったりするのかというと、やはり日常的に使われるものではなく、法的な意思表示や強い警告などに使用されるものだからです。法的強制力がないといっても、無視をしていると後で痛い目に遭う危険性を背後に感じられるからかも知れません。
これまで他から内容証明郵便を送りつけられるような経験がなかった方がほとんどでしょうから、そのような人が内容証明郵便を受け取るとなると、精神的にかなりのインパクトを与えることができるのではないかと思います。

差出人の本気度も強く伝わってきますので、今まで何も対応してくれなかった相手方が何らかの行動を取ってくる可能性は決して小さくはないと思います。
このような点に於いて、内容証明郵便を出す価値はあるかと思います。
内容証明郵便を出せばすぐにでも解決するような表現に近い書き方をしているものもありますが、その考えは危険です。
本当にお金がなく破れかぶれになっている人、開き直ってしまっている人、このようなことに慣れていて動じない人などにとっては、ただの紙切れと看做されてしまうことを考慮に入れておく必要があります。
内容証明郵便を出した結果、相手方が期待通りの動きをするとは限りません。それどころか、逆切れしてさらに神経を逆なでするような回答が送られてくることもあります。
たとえば、夫の不倫相手に慰謝料請求と謝罪を求める内容証明郵便を送付したとします。相手方が素直に謝罪し、慰謝料を支払って一件落着することもあります。また、支払う気持ちはあっても金銭的余裕がないような場合、請求額の減額を依頼されることも多いものです。
しかし、慰謝料を支払ったり謝罪をするどころか、逆に自分の方が被害者であるとか、嘘や悪態をついてくることさえあります。
「既婚者であることは知っていたが、交際開始時には既に婚姻関係は破綻していると聞かされていた。」
「交際開始時、独身だと聞いていた。むしろ騙された私の方が被害者だ!」
「しつこく交際を迫られたが、仕事上の関係で拒否が難しく、仕方なく付き合った。」

きっと反省の情を表した回答書が送られて来るはずと思っていたところにこのような回答が送られて、傷ついている心がさらに傷つけられるようなこともあり、悔しさのあまり食事が喉を通らない、夜も眠れないという訴えを聞くこともあります。このためのカウンセリングが必要となってしまいます。
内容証明郵便を出す際には、それを無視された場合、期待通りの展開とならなかった場合の対処方法も予め考えておかなければなりません。同時に、誠実な対応ではなかったことで、自身の怒りを制御出来なかったり、深く落ち込んでしまわないように覚悟が必要ではないかと思っています。
当事務所では、内容証明郵便作成のご依頼をお受けする際には、決して良いことだけではなく、このようなお話もさせて頂いた上でお受けするようにしています。