リストカットというメッセージ

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あるデパートの食品売場で、教え子に出会いました。
その店で働いているということで、明るい笑顔にホッとしました。

彼女は、リストカットの常習犯でした。
細い腕には、リストカットの跡がたくさん残っています。

彼女の父親は、地元の名門企業の三代目社長で、地方版「華麗なる一族」といった一家でした。そのため、不登校になった娘を”恥”と思っていて、一切を母親任せという状況でした。

母親は、父親ほどはひどくありませんが、子育てをお金で解決してしまおうというところがありました。毎月の小遣いとして20~30万円も与え、運転手にベンツで登下校をさせていたのです。最後の授業が終わる30分前頃から、校舎の前にベンツが停まっている風景をしばしば見掛けたものです。

でも、その子が欲しいのは、両親が自分のことを”見てくれる”ことでした。
そのメッセージが、自分の腕を傷付けることだったのです。

「私は多くの社員を抱える会社のオーナーなんだ!」・・・という妙なプライドが邪魔をして、なかなか教師の言葉に耳を貸そうとしない親でした。

両親の姿が娘の心を追い詰めていることを、どうしても理解しようとはせず、最悪の日を迎えました。

血で真っ赤に染まったベッドの上で、ぐったりした娘を発見したのです。

幸い、発見が早かったため、一命は取りとめましたが、心の傷はもっと深く、しばらくの間は一言も口を開かない状態が続きました。

本当に死のうと思って手首を切ったのか、いつものリストカットを失敗して深く切り過ぎてしまったのか、最後まで語ってはくれませんでした。

心の叫びを聞いてあげながらも、最後に救ってあげられなかった生徒でしたので、何百人もの問題を抱えた生徒と格闘してきた中で、最も無力感に叩きのめされた一人でした。

その子が、今は社会に出て、明るい笑顔で働いている。
何か”救われた”という思いがしました。

リストカットって、思っているより多くの子が経験しています。
その多くは、お父さんお母さんへのメッセージであると思います。